DXのための人材育成方法のポイントと課題

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DX(デジタルトランスフォーメーション)が進んでいる現代において、あらゆる職場でデジタル技術の導入が進んでいます。

しかしそのような技術を、ご自身が使えているかどうか、社内で活用できているかと聞かれると自信がない方も多いのではないでしょうか。

そのため今回は、DXのための人材育成方法について、ポイントや課題について解説しますので、ぜひ最後まで読んでご参考になさってください。

デジタル技術を導入するだけでは、DXの成功はできません。しっかりと活用できて初めてDXのスタートラインに立つことができます。

DXのために人材育成は必要なのか

DXのための人材育成と聞くと、技術者やエンジニアだけがわかっていれば良いと考える方もいらっしゃるでしょう。

確かに技術を導入するだけでは、全員が完璧に使いこなせる必要はなく、詳細に関しては、その分野の専門家だけが知っていれば良いかもしれません。

しかしDXは、単に新しい技術を導入するだけでなく、ビジネスモデルや業務プロセス、組織文化などを変革することを意味します。

そのため、専門家でない方が技術を「完璧に使いこなせない」のは仕方ないとしても「技術を使えない」「組織で活用できていない」というのはDXで乗り遅れてしまう可能性が高くなります。

語弊のないよう正しい言葉を使うと、DXにおいてのスキルとして「デジタルスキル標準」というものがあるのですが、その中でもやや難易度の高い「DX推進スキル標準」に関しては一部の方が身につければ良い一方で、「DXリテラシー標準」は全員が身につける必要があります。

「リテラシー」とは、もともと「読み書きの能力」を指していましたが、現在では知識を理解して、活用する能力のことを指します。

つまり、DXで成功するためには、組織全体としてある程度デジタル技術を活用できるようになる必要があり、そのために、組織的に新しい技術導入を推進できる人材の育成が必要なのです。

DXを推進することに向いている人

人は誰しも向き不向きがあるように、DXを推進することにも向き不向きがあります。
そこで効率よく進めるためにはまず、どういった方がDXを推進しやすいのかを考える必要があります。

DX人材として「なんとなくデジタルに詳しそう」という理由だけで選定して、デジタル技術の導入まではいけたものの、変革が推進できていないという方も多いのではないでしょうか。

そしてさらにDXでは、顧客や社会のニーズの変化にも敏感であることが必要です。
まとめると以下の3点を満たすような方がDXを推進できる人と言えます。

・デジタル技術に詳しい人
・変革を実行できる人
・顧客や社会の変化に敏感な人

ここまで読んで「そんな人うちにはいない」と思われる方も多いでしょう。
そこで以下の要素を持っている人を主軸に、社内でチーム体制を作ることが望ましいです。

・社内での影響力がある
・新しいものに対する好奇心がある
・臨機応変に対応できる柔軟性がある
・失敗をあまり気にしない

こちらもなかなかハードルが高いと思われるかもしれませんが、社内での影響力以外は全て性格に関することなので、上記の要件に最も近い人はいると思います。

そのような方をDX人材として育成できれば、効率よく進めることができます。

社内での影響力がある

DXは個人で取り組むものではなく組織的に取り組む必要があります。
DXの定義の中に「ビジネスモデルの変革」や「組織風土の変革」が含まれているためです。
そのため、社内でも影響力や発言力がなければ、難易度が上がってしまい非効率です。

「社内での影響力」と聞くと役職者、管理監督者などのいわゆる「偉い人」をイメージするかもしれませんが、必要なのは、地位ではなく影響力です。

それぞれの会社で、影響力のある方がどのような傾向にあるかは異なると思いますが、場合によっては「コミュニケーション能力が高い人」や「単純に面白い人」「場の雰囲気を和やかにする人」でも構いません。

とはいえ、地位のある人が影響力も強い会社は多いと思います。その場合はトップダウンになりすぎないような配慮が必要です。

新しいものに対する好奇心がある

DXでは、既存のデジタル技術を使うだけでなく、新しい技術を使う必要がある場面も出てきます。
そこでまず、好奇心がなければ新しい情報のキャッチアップが難しいでしょう。

日々進歩しているデジタル技術の最先端を追いかけ続けられる方が望ましいです。

臨機応変に対応できる柔軟性がある

上記の「新しいものに対する好奇心がある」ことに似ていますが、デジタル技術は日々進歩しています。
極端な話、今日までの成功事例が明日には時代遅れになっている可能性も否定できません。

現実的には、社会や組織には弾力性があるので新技術が誕生しても浸透するまでには多少時間がかかりますが、いつ常識が覆るいわゆるパラダイムシフトが起こっても柔軟に対処できるような考え方ができる人が向いていると言えます。

失敗をあまり気にしない

DXには成功事例の裏に、数え切れないほどの失敗事例があります。
そのため、失敗することを前提として動くぐらいの心持ちが必要です。

失敗すると、誰もが少なからず落ち込んだりするものですが、いつまでも引きずらずにすぐに失敗を元に次の一手を打てるような人材が望ましいです。
また、DX推進を担当する方への風当たりが悪くならないよう、心理的安全性の高い職場環境にすることが周りには求められます。

DXにより組織風土の変革が起こりますが、DXのために組織風土の変革が必要な場面もあるということです。

DX推進のための人材の育成方法

ここでは実際に、DX推進のための人材の育成方法について解説していきます。

基本は「デジタルスキル標準」

上で少し触れた「デジタルスキル標準」が基本となります。
「DXリテラシー標準」を社内全ての人に浸透させることと「DX推進スキル標準」を身につけている人を育成することを両軸で行なう必要があります。

「DX推進スキル標準」の習得は難易度が高い上に、あくまで一部の人に求められるスキルであるため、いかに「DXリテラシー標準」を浸透させられるかが鍵となります。

社内研修・トレーニング

DXリテラシー標準に関しては、詳細な技術の知識よりもDXで求められるマインドやスタンスの面が大きいため、社内研修などでも浸透させることができるでしょう。

その上に「なぜ必要なのか」「何をすれば良いのか」「どのように技術を活用するのか」の3つの柱があり、最終的な目的は「一人ひとりがDXリテラシーを身につけることで変革に向けて行動できるようになる」ことです。

社外リソースの活用

社内だけではリソースがない場合は社外リソースを活用する手もあります。

外部講師を招くことだけでなく「情報セキュリティマネジメント試験」「ITパスポート」の取得を支援するなど様々な手法があります。

効率よく浸透させるには、社内外のリソースをバランスよく活用しましょう。そのためにはやはり、企業風土によって異なるものの、土台となるDXリテラシーを浸透させることを先に行なった方がうまくいきやすい傾向にあります。

DX推進のための人材育成の課題

これまで読んできて、難しそうと思った方もいらっしゃるでしょう。
おっしゃる通りで、そもそものスタートがなかなか難しいという課題がまず挙げられます。

その上にさらに、以下のような課題も存在します。

スキルギャップ

DXリテラシーをすぐに受け入れられる方もいれば、なかなか受け入れられない、理解ができない方もいらっしゃるでしょう。

そのような場合に、個々の持つスキルにギャップが生じてしまいます。
学習のフォローアップなどによるケアが大切です。

反対される可能性がある

DXに関わらず、変化は常に一定の反発を生むものです。

現状維持の意思が強い方からは特に、抵抗させる可能性が高くなります。

その言葉にさらに反発すると組織が崩れてしまうきっかけになるので、反対意見の中でも取り入れられるものは取り入れながら、納得してもらうまで地道にDXの必要性を説き続けることが大切です。

リソース不足

学習やスキル習得のためには、時間の確保が必要です。
そうすると仕事が回らない、という会社もあるでしょう。

さらにDXでは、デジタル技術の急速な進歩、社会のニーズの変化が速いため、一度習得したスキルを役立てる前に次の技術が出ていたり、社会のニーズがまた変わっていたりします。
そのような場合は、部分的にデジタル技術を取り入れるなどの手法が有効です。

ソフトウェア業界で用いられる「アジャイル開発」や「ベータテスト」に似た形です。
業務プロセスの9割はそのまま維持しておいて、残り1割だけを別の手法で行なってみて、うまくいけば徐々に割合を増やしていくというイメージです。

効果検証が難しいところがありますが、リソースをほぼそのまま活用しながら業務への支障も減らすことができます。

まとめ

今回は、DXにおける人材育成の方法をお伝えしました。
すぐに取り入れられそうなものもあれば、取り入れることが難しく理想論のように聞こえたものもあるでしょう。

しかし、DXにおける人材育成は継続していくことが大切です。
なぜなら、顧客や社会のニーズの変化も継続的に起こり続けるものだからです。

デジタル技術の進歩の速さは目まぐるしいものがありますが、DXにおける人材育成は組織的に行なわなければならないものなので、ゆっくりでも地道に進めていきましょう。

参考資料:経済産業省、独立行政法人情報処理推進機構(IPA) |デジタルスキル標準(概要編)