DX推進におけるPDCAサイクルの活用方法とは?進め方を解説

  • ブログ

DXの推進は、現代の企業にとって避けては通れない取り組みです。

しかし、DXにおけるPDCAサイクルを考えると、最初の計画段階(Plan)から進まないうちに、新たな技術が出てきて計画の立案し直しになった経験のあるかたもいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、DX推進におけるPDCAサイクルの活用方法について解説し、PDCAサイクルと似ている概念も紹介しますので、ぜひ最後まで読んでご参考になさってください。

DXが推進されていく社会の中で、技術の進歩に追いつけないようなことにならないようにしましょう。

DXの意味をおさらい

DXを簡単にいうと、企業が変わりゆくお客様や社会のニーズに対応するためにデータやデジタル技術を使って、業務・組織・プロセス・企業文化を変革することです。

その推進のために今、各企業や社会全体が奮闘しています。

DX推進におけるPDCAサイクルの活用方法

先に結論から申しますと、DX推進におけるPDCAサイクルの活用方法のコツとして、以下のようなものが挙げられます。

・オーバープランニングを避ける
・スモールスタートで始めてみる

なぜならPDCAサイクルは、計画段階から進みにくいという特徴があるためです。
しかし、計画自体を疎かにしてしまうと、DXに向けた投資費用を回収できないなどのリスクがあります。
したがって、スモールスタートで小さなことから始めてみることが推奨されます。

DXでPDCAサイクルが進まない理由

PDCAサイクルを改めて説明すると、、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)の4つの段階を繰り返すことで、継続的な改善を図る手法です。
それぐらいわかってると思われるかもしれませんが、PDCAは「サイクル」であり「継続的な」改善を図る手法であることが意外と忘れられがちです。
つまり、継続的なサイクルではなく、1回でうまくDXに対応しようとしているところがネックとなります。
1回で適応しようとすると、綿密に計画を立てる必要があるため、計画段階で止まってしまうことになるのです。

計画をあまりに具体的にしすぎず、柔軟に対応することでDXにおいてもPDCAサイクルを活用することができます。

従来のPDCAサイクル

先述の通り、緻密すぎる計画、オーバープランニングがDXにおいてはネックとなります。
ここでのPDCAサイクルは今までと少し違ったPDCAサイクルの考え方になるかもしれません。

従来のPDCAサイクルは以下のようなものです。

計画(Plan)

計画段階では、まず目標を明確に設定することが重要です。目標はSMARTの原則(具体的、測定可能、達成可能、関連性がある、期限付きである)に従って設定するのが効果的です。
この分析には、SWOT分析やSTP分析などの手法を活用して、現状分析を行い、問題点や課題を洗い出します。
最後に、具体的な改善策を立案し、実行計画を策定します。

実行(Do)

計画段階で立てた改善策を実行に移します。
この際、実行に伴う進捗状況や成果を詳細に記録し、データを収集することが重要です。

評価(Check)

評価段階では、実行した改善策の効果を測定します。
収集したデータを分析し、目標が達成されたかどうかを確認します。
この評価に基づいて、成功点や問題点を明確にし、次回の改善に向けたフィードバックを行います。

改善(Act)

評価結果に基づき、さらに改善すべき点を見つけ出し、具体的な改善措置を講じます。
また、この段階で得られた知見や教訓を次回のPDCAサイクルに反映させることで、継続的な改善が実現します。

上記のようなものが従来のPDCAサイクルの形となるでしょう。

DXにおけるPDCAサイクル

一方で、先述した通り、DXにおいてPDCAサイクルの捉え方ですと計画段階で止まってしまいます。

計画(Plan)

計画段階で緻密すぎると、次の実行になかなか移れないという現象が起こります。
あくまで、リスクを最小限に抑えるためのことや、どんな技術を採用するか社会や顧客のニーズの仮説など、最低限のことだけ決めてスモールスタートができるようにしましょう。

実行(Do)

実行フェーズでは、効果測定のためにデータを収集しますが、同時に社会や顧客のニーズも調査していきます。
計画段階で立てた仮説が、机上の空論となるのを防ぐためです。

評価(Check)

評価段階では、実行した改善策の効果を測定します。
収集したデータの分析に加えて、社会や顧客のニーズについても分析します。
この評価に基づいて、成功点や問題点を明確にし、改善に向けた軌道修正を行ないます。

改善(Act)

評価結果に基づき、さらに改善すべき点を見つけ出し、具体的な改善措置を講じます。
そして次の計画段階でブラッシュアップしていきます。

従来のPDCAサイクルとの違い

従来と違うところはやはり、計画があまり緻密すぎないところです。
理由は、変化する顧客や社会のニーズの変遷が早すぎて、計画通りに行かないケースが多いためです。
進まないぐらいなら、計画段階では、最低限のルールだけ設けるようにした方が、早く軌道に乗せることが可能です。

企業によっては、確固たるエビデンスがなければ上長の承認がおりないということもあるでしょう。
しかし、組織風土の変革もDXの中の1つであることを鑑みると、考え方を改める必要があるとも言えます。

PDCAサイクルを活用したDXの事例

ここでは、具体的な事例を通じて、PDCAサイクルを活用したDX推進の事例を紹介します。

製造業におけるIoT導入

ある製造業の企業では、IoT技術を導入して生産ラインの効率化を図ろうとしました。
計画:IoTセンサーの設置箇所を設定
実行:センサーを設置し、データ収集を開始
評価:収集データを分析し、生産効率や設備稼働率を確認
改善:データに基づいて設備の調整やメンテナンスの計画を再立案

やはりスモールスタートで計画をそこまで綿密に設定してはいません。

小売業におけるデジタルマーケティング

小売業の企業では、デジタルマーケティングを活用して売上向上を目指しました。
計画:ターゲット顧客層の設定とマーケティング施策の計画
実行:SNS広告やメールマーケティングを実施
評価:各施策の効果を評価し、顧客反応を分析
改善:反応の良かった施策を強化し、効果の低かった施策を見直し

このケースでは、ターゲット顧客は実はDX以前からほぼ決まっていたので、マーケティング施策の計画しか行なっていません。

その代わりに、小さなコストのかからない施策をたくさん行なうことでPDCAサイクルを回しています。

PDCAサイクルに代わるもの

DX推進にあたりPDCAサイクルが抱える「オーバープランニング」を避けるため色々な代替案も出てきています。

DCAPサイクル

Pの計画がボトルネックとなるのであれば、PDCAの順番を変えて計画を最後に持ってこようという単純なものです。
実際に、現実的に考えるといきなりDの実行ができるものではないので、どうしても最初に小さい計画はどちらにせよ発生しますので、がむしゃらに進んでいる訳ではない場合が多いです。

PDRサイクル

PDRサイクルは、Prep(準備)、Do(実行)、Review(見直し)の3つのステップからなるサイクルです。
PDCAサイクルのPlan(計画)をPrep(準備)に変え、よりスピーディーかつ柔軟にサイクルを回せるようにした点が特徴です。
単純に3文字なことからも直感的に理解しやすいサイクルです。

OODAループ

OODAループは、Observe(観察)、Orient(状況判断)、Decide(意思決定)、Act(行動)の4つのステップからなる意思決定と行動のフレームワークです。
PDCAサイクルとOODAループの違いは、PDCAサイクルよりもスピードと柔軟性を重視していることが挙げられます。
PDCAサイクルは、計画に基づいて行動し、その結果を評価して改善するというサイクルを繰り返すのに対し、OODAループは、状況の変化に応じて、常に最適な行動を選択し、迅速に行動することを重視します。

PDCAサイクルに代わるものとして最も有力視されているフレームワークです。

これらを否定もしませんし、PDCAサイクルがダメだとも思いませんが、DXのあらゆる変革の中にはこういった業務のプロセスの変革も含まれるのです。

スピードだけではないPDCAサイクルが進まない理由

今まではPDCAサイクルは計画段階でつまづくことについて話して参りましたが、それ以外にも理由は存在します。
主に、DXが組織変革にまで踏み込むような概念であるため、重く考えすぎることが進まない理由として挙げられます。

組織文化の問題

組織文化が硬直化していると、DX推進におけるPDCAサイクルの導入を阻害する大きな要因となります。
硬直化していなくても文化の変革はなかなか受け入れにくいでしょう。
変化への抵抗:既存の業務プロセスに固執し、新しい手法を受け入れない文化(現状維持バイアス)
共通した認識の不足:組織内での情報共有が不十分で認識に齟齬がある

リソースの不足

DXにおいて、PDCAサイクルを効果的に回すためには、十分なリソースが必要な場合があります。
しかし、多くの企業では以下のようなリソース不足が問題となっています。
人材不足:専門的なスキルを持つ人材が不足している
予算の制約:DX推進の予算が限られている
責任の曖昧さ:DX推進における責任者や担当者が明確でない
このようなことを避けるためにも、できることから始められるようにスモールスタートを推奨している理由の一つです。

知識やスキルの不足

PDCAサイクルを正しく理解し、効果的に活用するためには、従業員全体の知識とスキルの向上が必要と考えると、以下のような問題が発生することがあります。
教育・研修の不足:DXについての教育が不十分
スキル不足:デジタル技術やデータ分析のスキルの不足
いきなり大きく変えようとすると、会社全体での勉強会のセッティングが必要だったりと大きな問題になるかもしれませんが、スモールスタート前提で考えると、数人で行なうことができるので、そこまでの問題にはなりにくいでしょう。

まとめ

DX推進において、PDCAサイクルを活用することは、重要な手法です。
しかし、PDCAサイクルを今まで通りに捉えると、計画段階から進めなくなってしまいます。
それを防ぐために、オーバープランニングを避け、スモールスタートで柔軟に進めることが推奨されます。

あくまで重要なのは進め方の型ではなく、変化する顧客や社会のニーズに迅速かつ柔軟に対応するための仕組みを構築し、継続的な改善を図ることです。
DXの成功には、企業全体での意識改革と持続的な努力が求められています。